停電2

3/3
前へ
/310ページ
次へ
あの人に会うと、熱くて苦しい。 耐えようのない獣のような衝動が襲う。 このエネルギーを分散しないと、全てが あの人に向いてしまう。そうなったら もう、抑えられない。 俺は獣だ。 … 「城山くん、なに見てたの?」 「いや…何でもない」 暑い。熱い。 この夏の日に締め切られた窓。 授業中つけられていたクーラーは、放課後 になった今では切られている。 窓に叩きつける雨のせいで、開けることが 出来ないのだ。汗が滴る。 でも、こんなに暑く感じるのはそれだけの 理由じゃないのだ。 「辻井ー!先生が呼んでる」 ドクン。 「今行く」 一瞬にして静まりかえった俺の世界で その声だけが耳に入った。 意識せずとも自然と視線は彼に向かう。 そして、彼の切望する瞳とぶつかった。 強い衝撃。 光と闇が交差する。 暑い。熱い。 そして突き動かされたように、俺は 駆け出した。 end
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加