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「いっちゃん、ゲームばっかやってない
でさぁ…久し振りにあったのに」
「んー、もうちょっと」
彼の細腰に手を回そうとしたら身を捩って
拒否される。彼の目線は画面へ一心に
注がれていた。あぁ、俺はゲームに生まれ
たかったよ。俺から見えるのは彼の後ろ姿
だけ。
どうせ今日だって俺が無理矢理押しかけた
んだ。だって2週間会ってなかったら恋人に
会いたくもなるだろ、普通。来たら来たで
『何、急に』って迷惑そうな顔で出迎え
られました。泣きたい。
いいんだ、俺なんか。いいんだ。
心の中で拗ねながら、彼に構うのをやめ本
を手に取りベッドにごろんと寝転ぶ。
あ、いっちゃんの匂い。
切なさと心地よさが混じる。
本人すぐ近くにいるんだけどな。
恋人なんだけどな。
溜め息を必死で飲み込んで、本を読むため
に近眼用のメガネをかけた。
気になっていた小説だったこともあり
いつの間にか俺も本だけに集中していた。
…
面白かった、とほくほく思いながら
見終わった本を閉じる。
同じ姿勢だったから身体中がいたい。
彼に目を向けると、まだ変わらず俺に背を
向ける姿勢でそこにいた。
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