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お、ま、け
…
『一之助、ちょっとはお前から何か
行動してやっても良いんじゃないか?』
「何でだよ」
俺と大地の共通の友だちの八木から電話が
かかってきた。おおかた、大地が彼に愚痴
ったのだろう。
『電話とか、会いに行くのとかさ。
されると嬉しいだろ?』
「うん」
だからって俺がやる必要あるのか?
『同じこと、あいつにしてやれよ』
なにそれ恥ずかしい。むりむり。
「…俺、そういうキャラじゃないし」
だってそれに。
「それに、電話したいなとか会いたいなっ
て思ったタイミングで大地がちょうどして
くれるんだよ」
『…さいですか』
彼の無償の愛に埋れていた俺。
愛すより愛されたい。
甘やかすより甘やかされたい。
想いの重さなんて自分でも分かりはしない
けど、でも予想の斜め上をいく数値を叩き
出すに違いない。
彼の優しい笑顔を思い出す。
会いたいと、確かに思う。
<ピンポーン>
チャイムが部屋に鳴り響いた。
俺ば携帯を投げ出した。
足を滑らして、転びそうになる。
玄関前で表情を整えた。待ってました!
なんて顔、あいつに見せたくないんだ。
何気ない風を装いながら、ゆっくりと扉を
開ける。
「…何、急に」
「久し振り、いっちゃん。
会いに来ちゃった」
end
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