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「なぁ、宮田。
花火大会とかって好きか?」
気だるげに書類を片付けている彼に、そう
切り出した。ただ、答えはもう分かって
いるようなもので。
「んー…人混み苦手だし、あんま好きじゃ
ない」
「だと思った」
彼に気付かれないように溜め息を吐く。
実は明後日に、近くで花火大会がある。
2人で行きたいなぁ…なんて思ってたわけ
だが無理そうだ。宮田だもんな。
分かってたけど、行きたかった。
「…会長、どうかした?」
「なんでもない。書類、風紀に出しに
行ってくる」
宮田は人の機微に鈍感だ。というかあまり
興味がないらしい。だから、それ以上追求
してこなかった。
八つ当たりのように扉を強めに閉めて
せかせか歩く。
(宮田のアホ)
***
「よ、リア充」
「…恥ずかしいからその呼び方やめて」
八木はにやにやして俺を見る。
会長と付き合うことになってからこの調子
だ。ほんと、勘弁してほしい。
「まさか宮田がなぁ。隅に置けないやつ
だぜ。マグロ一本釣りとはなぁ」
「うるさいから。あれ、市井は?」
彼の姿が見えない。八木のお守りがいない
なんて大変だ。
「…1年に呼び出されてる」
「あぁ」
なるほど。この微妙なやさぐれ加減は
それが原因だったのか。
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