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「市井はモテるよね」
「みんな騙されてんだよ。あいつただの
血も涙もない鬼、」
「誰が血も涙もない鬼だ、コラ」
突然、声と共に拳が八木に振り下ろされた。
良い音がする。
「ギャ!」
悶絶する八木をほっといて、隣の席に
座った市井を迎えた。
「おかえり、市井~。OKしてきた?」
「名前も知らないやつと付き合わねぇよ」
表情も変えずに言うあたり、告白慣れ
してるなぁ、と思う。
「…格好つけちゃって」
「聞こえてんだよ」
「地獄耳!」
言い合いをする彼らを眺める。
俺も、さすがに分かってることがある。
八木は市井が好きで、市井も八木が好き
だってことだ。
だから市井は告白を全部断るし、八木は
市井に構って欲しくてわざと怒らせる
ようなことを言う。
でも、どっちも全く伝わってない。
「…2人は俺より不器用だよね」
「「それはない」」
間髪入れずにそう返された。
納得出来ない。
「絶対、会長は大変だよな。宮田が
彼氏なんてさぁ。ちゃんと恋人らしいこと
してる?」
「…夕飯とか時々一緒に食べてるよ?」
「デートは?何回したんだ」
「めんどくさいし、基本家デート」
これだから、と態とらしく溜め息を吐いて
肩を竦める2人。
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