必需品は吉田くん

2/6
前へ
/310ページ
次へ
「…ったく、お前はまたこんなに散らか して!脱いだら洗濯機に入れろって何回 言わせんだ!」 散らかり放題の部屋。脱ぎっぱなしに なった服を拾いながら、背が高く目つきが 悪い吉田が、寝そべって本を読んでいる 鈴村に怒鳴った。 彼は面倒くさげに半身を捻る。 「だって吉田がやってくれるから…」 「てめぇの部屋が汚なすぎて耐えられ ねぇんだよ!」 吉田は服を洗濯機にぶち込むと、次に台所 にとりかかった。 「男子の部屋なんてこんなもんじゃね? 吉田がキレイ好きってだけだって」 部屋の主である彼は特に何もせず、本を 片手に吉田を眺める。彼は腕まくりをして 食器を洗っている。カチャカチャと食器 同士がぶつかる音。 「いや、そんなことはないだろ。こんな 汚い部屋見たことなかったし」 「そうかなー?」鈴村は部屋を見回す。 「案外キレイだよ?」 「お、れ、がキレイにしたんだよ」 まったく、と言いながら手を止めること なく手際良く掃除を進めていく吉田。 今度は本やら教科書をもとの場所である 本棚に入れて行く作業をしていた彼が 小さく悲鳴をあげた。 「どした?」 「…もう、マジでコレだけは自分で しまってくれ」 放置された本たち。 見ればただの18禁のBL同人誌だ。 「自分の体くらい見慣れてるでしょ?」 「それとこれとは別なんだよ」 理解出来ない、と吉田は顔を顰める。 -
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加