必需品は吉田くん

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そんな吉田に、鈴村はおもむろに手を 伸ばしその中から一冊手に取った。 そしてページをぱらぱらとめくり、適当な ところで吉田の方に向ける。 「ほらほらー」 「ぎゃっ!めちゃくちゃな濡れ場 じゃねえか!ふざけんな!」 「おっと、それはごめんよ」 向けていた本を引っ込める。 「なんでそういうのって本屋とかでも 成人誌コーナーに置かねぇの?幼気な少女 とかが読んだらどうする気だ」 「新しい素敵な扉が開くだけじゃん」 「致命的だろ」 そうかなぁ?と首を傾げる鈴村。 彼は立派な腐男子なのである。 「吉田も腐男子になってくれれば良いのに」 「別に偏見はないが、天と地がひっくり 返ってもそれはない。なぁ昼飯何食う?」 時計を見れば12時半。ちょうど鈴村の お腹が鳴った。 「んー、オムライス」 「りょうかい」 引っ掛けてあった黒いエプロンをつける。 鈴村より中身を知っているだろう冷蔵庫の 中身を漁り、材料を取り出すとさっそく 調理にかかった。 野菜を刻む、心地よいリズミカルな音。 トントントン。鈴村はそれを聞きながら 目をつむってソファで微睡む。 「鈴村、寝るなよ」 「…うーい」 なんで見てないのに分かるのか、鈴村は 腑に落ちずにしょうがなくうにうにと 立ち上がる。そして、吉田の隣に立った。 「まだ出来ないぞ」 「知ってる。見てるだけ」 -
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