必需品は吉田くん

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歌を口ずさみながら、玉ねぎを炒めている 吉田。あったかくて優しいメロディ。 鈴村は吉田が何気無く歌うその曲が好きだ。 ふと、フライパンを覗き込んだ彼は 「うぎゃ!」と奇声を発した。 「吉田ぁ、目ぇ痛よー」 「裸眼だと沁みるんだよな。…おい俺の 服で涙を拭くな」 痛いよー、と泣きながら顔を吉田の服に うずめる。 「鈴村、そこにいられるとちょっと邪魔だ。 動きにくい」 「うっうっ…良い匂い」 「嗅ぐな」 玉ねぎの刺激が落ち着いてくると、鈴村は また吉田が料理するのを眺め始めた。 厚切りベーコンを入れた後はご飯を投入。 味付けはケチャップと塩コショウ。 グリンピースは入れない約束だ。 よく混ざったら少し炒めて、火を止める。 茶碗に押し込めてお皿にあけた。 それはキレイなドーム状になる。鈴村は 旗を立てたくなった。お子様ランチに ついてるやつ。 吉田は1番重要な卵にとりかかった。 贅沢に卵は1人3個。その卵にマヨネーズと 牛乳を加えて混ぜる。フライパンにバター を入れて、ぐるりと回した。完全にバター が溶けないうちに弱火にして卵をフライパン に投入する。ジュワ、と音がした。 「一家に一台、吉田護。なんと本日、この 吉田護のお値段、ご奉仕価格の~ 2万9千8百円!」 「…三万きるのか。安いな」 「ご奉仕価格だからね。本来のお値段は4万 9千8百円」 「それでも五万台にのせてくれないのな」 -
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