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鈴村は思わず出てきたよだれを拭う。
くるくると菜箸で固まってきた卵をかき
混ぜて、今度は何もせずに10秒。そしたら
火からおろしてフライパンから卵を剥がす。
ケチャップライスの上にとろっとろのそれ
を滑らした。
「うひゃぁぁぁ」
「おし、完璧」
光り輝く卵のオムライス。ここに完成。
「いっただきまーす!」
「いただきます」
***
「…お前さ、吉田に彼女とか彼氏とか
出来たらさどうすんの?」
友人の青山がそんなことを鈴村に言った。
「うん。だからね、吉田どっかで売って
ないかなぁって」
彼の返事に、青山は溜め息をついた。
「そうじゃなくてよ。まぁ、吉田が好きで
やってることだから今は良いけど」
「…吉田、好きな人とかいるのかね」
「さぁ」
「よし、聞いてみよ。普段あんまそういう
話しないし。片想いしてる相手が男だった
ら良いのにな~」
鈴村は意気揚々と立ち上がる。
するとちょうど、教室の扉が開いて吉田が
入ってきた。
「お、ナイスタイミーング」
鈴村と青山の出迎えに、吉田は身構える。
「なんだよ」
「吉田って好きなやついるの?男?」
前振りもなく、単刀直入に。
一瞬吉田は固まった。
そして、首を左右に傾げながら眉間に手を
当てて考え始める。
「…いや、多分いない…と思う」
「考えた結果、すごく曖昧だな」
「いないのか!じゃあまだ安心だね!」
「…お前もそれで満足なのかよ」
もうお前ら意味分からない、と青山はさじ
を投げた。
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