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「くっ、社ちゃんは俺が守るっていうやつ
ですか…さすが男の中の男っス!」
うんともすんとも言わない俺に、いたく
感動した顔でそう言って踵を返した背中を
見送る。
「ふう…」
しばらく神妙な顔をして黙っていれば勝手
に自己解釈して去って行ってくれる。社は
抱かれる方でなくて抱く方だという誤解は
解けないし、むしろ面子をかけて解くつも
りも毛頭なかった。
***
「宗さーん。お風呂出たよ」
「おう」
身体から湯気をのぼらせてホクホクした顔
の社が出てきた。グレーのスウェットパン
ツを履き、上半身は肩にタオルがかかって
いるだけで彼のしなやかな裸体が晒されて
いる。「あちー」と言いながら髪をかきあ
げる動作は今は女らしさよりもセクシーな
男らしさに溢れていた。
社はかっこいいな、と素直に思う。普段が
あんなせいかこういう女装をしていない時
の彼の格好良さが際立つのかもしれない。
女装をしている時はしている時で良さはあ
るのだけど。まぁ何を言いたいかと言うと
俺は彼のことが大好きだということで。
「どうした」
ゴムで髪の毛を後ろに纏めていた彼が俺の
視線に気付き、ふはっと気が抜ける笑い方
で笑う。
学校にいるより低めの声に顔が火照った。
こんなにもスイッチを切り替えられると
まるで別人みたいでどぎまぎするのだ。
「好きだな、って思って」
「なにそれ可愛い」
彼はそう言って俺のおでこにキスをする。
可愛くないよ俺なんか。武士とか鉄仮面と
か言われるし。飲み物の差し入れは緑茶か
ブラックコーヒー。
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