シグナル

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「会長、休憩も良いけど書類を終わらせて もらえるかな」 朗らかな笑みにはそぐわないメガネの奥の 絶対零度の視線がイスにもたれて携帯を弄っ ていた会長にとんだ。 「…うーい」 会長は副会長である桜井さんに口答えは あまりしない。答えは簡単、怒らせると1番 怖いのは彼なのを知っているからだ。懐が 深く、視野が広い。桜井副会長はフォロー も上手な縁の下の力持ち的な存在である。 彼は俺の憧れだ。入学した時から、一目見 た時からずっと背中を追っている。 なんとか生徒会補佐に選ばれた俺は、生徒会 室に入ることを許され雑務をこなしている のだ。 「あー…ここ分かんねぇ。ちょっと顧問の とこ行ってくる」 サボる口実かもしれないし、本当なのかも しれない。書類を持って会長が立ち上がる。 「待って。どこ?俺が見てみるから」 桜井副会長の申しでに、明らか顔を歪めた。 どうやらサボる口実だったようだ。 「ねぇ、サクちゃん。書類終わった!」 「遊んできても良いよね?」 とことこと彼の側に寄って、書類を渡す 会計さん方。彼らは双子で見分けはあまり つかない。まだ日の浅い俺には特に。 「…ここ、抜けてる。あとこことここ。 計算違うんじゃない?」 一通り書類に目を通した彼は、気になる 箇所を上げて、また突き返した。 「あー…ほんとうだ」 「ちぇ~」 彼らはしょんぼりとしながら机にまた戻っ ていく。いつもの光景だ。 -
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