シグナル

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俺は本棚の書類の整理をしている。机の上 には膨大な資料が。全てをファイリングし て並び替えなければならないのでなかなか 終わらない。休憩なんぞとれる身分でもな いし、桜井副会長が頑張ってるのに自分が 手を抜くとは何事かと必死で手を動かして いる。 だから、基本的に生徒会の人たちとは背を 向けた格好で作業している。耳はうさぎの ように澄ましているのだけど。絶対にあの 音を聞き逃さないように。 カチカチ。 (あ、) ボールペンのノック音。それが、2回。 聞こえた。俺は振り返るのを我慢する。 キュッと服を掴んで、逸る心臓を押さえた。 「トイレ行ってくるけど、サボるなよ」 続いて副会長の声。彼はそう言って生徒会 室から出て行った。俺は、心の中で1分数え る。 そして緊張で乾いた唇を舐めた。 「あの…俺もトイレ行ってきます」 *** 扉をそろりと静かに閉める。 「お、そ、い」 「うわっ!」 背後から耳元で囁かれ、飛び上がった。 -
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