それぞれのバレンタイン2

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素直になれる5秒前 風紀委員長×親衛隊総隊長 (風見喜一)(有村蓮) 「ほら、総隊長!せっかく作ったんです から渡さなきゃ」 「でも…」 廊下の角から、顔を出す。そこには何やら 話し込んでいる風紀委員長の姿。今日はい わゆるバレンタインデーというやつで。 昨日の夜、皆に混ざって渡す予定もなく作 ったブラウニー。どうしようと悩んだ僕に 『せっかくだから風紀委員長にでも渡せば 良いじゃないですか』という提案にそれが いいという満場一致。場に流されてそして 今に至る。どうしよう。でもやっぱり迷惑 じゃないか。窮地に立たされ頭を抱える僕。 「しゃらくさい!」 「う、わっ!」 物理的に背中を押された。声をあげ、2・3 歩前に出る。恐る恐る顔を上げると風見風 紀委員長と目があった。いつものむっつり した顔で見下ろされ、顔がポッと熱くなる。 今日もかっこいい、です。 「…こんに、ちは」 「…こんなとこで何をしている」 下心丸出しだと絶対受け取ってもらえない だろうな。いつもお世話になってるし、感謝 の気持ちで、そう、軽くソフトに。 そんなこんなで背中に隠していた2時間格闘 したラッピングをしたチョコを勢い良く 彼に差し出した。 「ぎ、義理なんで!!いつもお世話になっ てるからで、深い意味とか全然全くほんの 少しもないんで受け取って下さい!」 顔が見れない。でも、彼が受け取ってくれ たことは箱が離れていったことで分かった。 「…そうか」と呟いたその声音も表情まで も気を回す余裕なんて僕にはなくて。受け 取ってくれた嬉しさと恥ずかしさでバクバク とする心臓を抑えながらその場を走り去っ たのだった。 (『…そんなに本命じゃないことを 強調しなくても良いじゃないか』 『風紀委員長ドンマイ』) end
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