それぞれのバレンタイン2

3/4
前へ
/310ページ
次へ
shall we dance? クールイケメンさん×腐男子平凡 (文田 陽介) (紫藤 春樹) 「いらねぇ」 廊下に現れるチョコを持った生徒をバッサ バッサと百人斬りする勢いなのは俺の彼氏 の陽介くんです。下駄箱や机の中やいつの間 にか入っていた鞄の中のチョコたちも名前の あるものは全て返しに行く予定らしい。 捨てないところが彼の良いところである。 「貰っとけばいいのに。可哀想じゃん」 そのくらい、別に構わない。俺の器はそんな に小さくないのだ。甘くみないで頂きたい。 しかしそう言うと、何故か陽介は不機嫌な顔 になって「…そうかよ」とプイッと横を向い てしまった。 *** 陽介を置いて、俺はトイレへと行った教室 への帰り。また陽介が呼び出されて廊下に いるのを発見した。相手は、まぁこれまた 美人で有名な先輩で。2人のツーショットは とても絵になる。そのまま他人事のように思 いながら見ていた。先輩が黒い小さな箱を陽 介に差し出す。 ーすると、なんと陽介は彼からのチョコを 受け取った。 俺は目を瞬く。 (え、なんで。今まで断ってたじゃん) 先輩は嬉しそうに俺の横を通り過ぎて去っ てく。陽介が振り向き、俺に気付いた。 駆け寄ってくる。右手には先ほどの先輩の チョコ。 「んなところで固まってどうした」 一点を見つめたまま黙り込む俺に、彼は察 したらしく。「あぁ」と言った。あぁ、っ てなんだよ。やっぱり美人が良いんじゃな いのか。モヤモヤが沸き起こる。ダメじゃん 俺。器、お猪口並じゃん。でも俺にはまだ まだ自信が足りなくて。だって2人はお似合 いだった。陽介は溜め息を吐く。 「ほら、受け取ったら受け取ったらで そんな顔する」 俺、今どんな顔してんだろ。少し泣きそう だ。きっと、情けない顔。陽介は呆れたよ うに笑う。 「違うから。これ、渡してくれって 頼まれただけだから」 安心して下さい、と俺の頭を撫でた。 正直めちゃくちゃ安心した。 「…別に不安になんかなってないし」 「はいはい」 「陽介のくせに」 end
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加