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3. イケメン×地味
『右から左へ』
「なぁ、LINE教えてくんね?」
そう春田に聞かれた時、僕は少なくとも心の中でガッツポーズして喜んでいたんだ。いくら表面上に現れなくても本当はにやけそうで堪らなかったのだ。だって前から僕は彼のことが好きだったから。
…次の言葉が続くまでは。
「お前、廣瀬と仲良いよな?」
***
廣瀬というのは、僕の幼なじみの名前だ。明るくて人懐っこい笑顔が可愛い、僕の自慢の幼なじみ。いつもクラスの中心にいてまるで太陽みたいな存在で。幼なじみじゃなかったら、たぶん僕なんかと仲良くしてない、そんな人。そしてまぁ、良くモテる。僕を通して連絡を取ろうとする人もいっぱいいるのだ。
…今回も、残念ながらそのケース。
なるほどね。慣れたこととはいえ、今回ばかりは冷めていく熱に胸が痛い。
「うん。仲、良いよ。廣瀬の連絡先、送るね」
僕がそう答えると、春田は何故か眉根を寄せて後ろ髪を乱暴に掻いた。
「だぁ、もうっ…おう、さんきゅーな」
良く分からないけどお礼を言われて、キュンとなる。まともに話したことすらなかったから、例え好意が僕に向いてないとしても嬉しい。
「…どういたしまして」
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