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4.ワンコ後輩×無気力先輩
『リードは必要か否か』
「日野先輩、おはようございます!」
煩いほどの元気な声が後ろからかかった。振り向かなくても誰かすぐ分かる。こちとら低血圧でまだ起動しきってないのに、この違いはなんだろう。返事をしながら欠伸が出た。
「…おぉ、戸間。はよ」
「先輩、朝弱いっすよね」
すぐに彼はダラダラと歩く俺の横に追いついた。それからは俺の歩調に合わせてたわいもない会話をしながら教室まで歩く。なにがそんなに楽しいのか、戸間はいつも笑顔だ。まるで犬のように「日野先輩」と俺の後をつきまとう。
「朝から日野先輩に会えて嬉しいです。ぼんやりしてる先輩、可愛いから」
ニコニコ顔でそんなことを素で打ち込んでくるのだこいつは。隠そうとしない俺への好意に、溜め息が出る。
「可愛かねぇよ」
「先輩は可愛いですよ。あ、こんど2人で出かけません?見たい映画があるんです」
「サラッとデートに誘うんじゃありません」
「行きましょうよ、ね?」
「そんなでかい図体でキュルンとされても可愛くない」
「先輩は小ちゃくて可愛いです」
「ぶん殴るぞ」
これでも平均身長だってんだ。最近の若い奴は発育が良いのかなんなのか。戸間の顔を見るには見上げなければならない。腹が立って睨みつけた。
「え、俺なんかしました?」
戸間は焦ったように眉を下げて肩を縮める。垂れた耳が見えるようだ。
「…別に」
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