没ネタ集

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5.嫌われ平凡主人公的な 『平凡な僕のある秘密』 靴箱を開けると、悪臭が鼻についた。思わず顔をしかめる。ズタズタに切り刻まれた上履き。投げ込まれた生ゴミが臭いの原因らしかった。溜め息を吐き、そのまま閉めた。クスクスと悪意に満ちた笑い声がどこからか聞こえてくる。やった本人たちなのだろうか、問い詰める気にもなれず俺は俯いて、ゆっくりと歩き出した。 ー起こりの原因は俺の同室となった転校生だった。暗黙の了解で抜け駆け禁止となっていた生徒たちをあの手この手で次々と陥落。その手腕には唸らされるが、どうやら無意識らしかった。毎晩のように彼らは転校生の部屋(俺の部屋でもあるのだけども)に訪れる。俺は息を殺して、自分の部屋でただジッとしていた。会話も彼らとは交わさず顔も合わせることはない。それなのに。 …まぁ、転校生の家は有名な資産家で大企業と繋がりも大きいらしく迂闊に手を出すことが出来ないようだ。そしてそのガス抜きに俺が使われているのだろうと推測した。…大丈夫。きっとみんな直ぐに飽きる。反応して面白がらせるな。弱さを見せるな。頼れる奴なんか誰もいない、信じるな。人はみんな、自分が可愛い。 (早く前みたいな普通の日々に戻りたいな) 弱みに付け込まれるな、自分。シャンとしろ。自分で自分を奮い立たせた。 -
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