I'm all thumbs.

3/4
前へ
/310ページ
次へ
*** 「さっき春田と何話してたの」 トイレで用を足し、手を洗っていると横から声をかけられた。顔を向けなくても廣瀬だと声でわかる。鏡に映った冴えない自分の顔に辟易しながらハンカチで手を拭き終わってから、廣瀬と向き合った。 「別に…あ、春田にLINE教えて良い?」 「え。春田、俺の連絡先欲しいの?」 「そうらしいけど」 怪訝そうに尋ねられる。何をそんなに驚くことがあるのだろう。それにしても自分の顔を見た後、彼の顔を見るとその違いに神を恨みたくなる。 「…廣瀬はかっこよくて良いな」 廣瀬みたいだったら、僕も春田に好意を寄せられただろうか。廣瀬は目を細めて笑った。なんだか胸につっかえる笑い方だった。 「アリガト」 横を通るついでに僕の髪をワサワサと撫でて、廣瀬は出て行く。背中を見送り、手櫛で髪を整えた。良く分からない。廣瀬は告白されたらだいたい付き合う。そして1ヶ月も経たないうちにだいたい別れる。ちゃんと相手のことが好きなのかな。でも、その度好きになってたらきっと大変で。じゃあ彼の本当に好きな人はいるのだろうか。 -
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加