おめでとうこざいました

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「ヤルマさん、弟子欲しくないですか?」 ギルド本部の廊下を歩いていると、部下のセナーから怪しい勧誘を持ちかけられた。弟子などという面倒なものを持つ気はないので即座に断る。だがセナーはなかなか食い下がった。 「良いですよ~弟子。雑用は全部やってくれるし。『師匠!』とか一度は呼んで欲しい言葉じゃないですか」 「別に呼ばれたくない」 「またまた!強がっちゃって」 「強がってねぇよ。とにかくいらん」 「そうですか。…残念だなぁ。将来有望そうな、ヤルマさん好みの綺麗な顔をした子なんですけど」 溜め息を吐いて、また通りかかったやつに声をかけようとしたセナーの肩を掴む。 「…うん、まぁ待て。話くらいなら聞こうじゃないか」 *** 「……師匠、人の顔見て溜め息吐くなんて失礼じゃあないですか」 そんな出来事から、10年経った。女好きという俺の性格を上手く利用したセナーの口車に乗せられ引き取った弟子。確かに強い意志が宿った大きな瞳は溜め息が出るほど美しかったし、珍しい夜色であることも魅力だった。瞳と同じ色の髪の毛は白い肌を引き立たせ、また唇の赤味もいっそう鮮やかに見せた。…例えまだ5歳の子どもだとしても、将来が楽しいみになる、美しい童子だったのだ。しかし、一つ落とし穴があることに俺は気付いていなかった。 -
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