おめでとうこざいました

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「この世のどの宝石よりも綺麗、だろこの酔っ払い!聞き飽きたぞそのセリフ。そんな大事なら早く帰れば良いだろうが!」 「んなこと言われたって、あんな啖呵切った手前そんな早くは帰れねぇよぉ」 「早いっても、もうあと30分で日を跨ぐぞ。そら、帰った帰った。おーいセイラ、勘定してくれ」 ヤルマを店の外に追い出すと、ハックはこのバーのマスターであるセイラに声をかける。 「今日はヤルマの分の勘定はいらないよ」 「え、なんでだい」 「知らないのかい?今日はやつの…」 *** 「ターリヤぁ、ただいま~」 帰った時には部屋の明かりはすっかり消えていた。もう彼は寝ているのだろう。起こさないように静かに扉を開けた。指を鳴らして、部屋中の蝋燭に火を灯す。するとテーブルに伏せる一つの影があるのに気が付いた。 「…ターリヤ?」 声をかけるが反応がない。眠り込んでいるようだ。こんなとこで寝ていては風邪をひくだろうに。しょうがねぇなと、そっと毛布を持って近付いた。しかし何故こんなところで。まるで誰かを待っていたような。 -
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