白線よりお下がりよ

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「風太(ふうた)、ねむいぃ…」 「おー。授業まで時間あっから寝ろ」 座って本を読んでいた風太の、細い首に手を回して、ぐりぐりと甘えるように頭を擦り付ける。そして風太は無意識なのか俺の髪の毛を指に巻いて手悪戯をする。俺はそれが気持ち良くて、手が止まるともっととせがむのだ。 「ラブラブだな」 そんな冷やかす周りの声に、俺たちは揃いに笑って「そうだろう」と言うのだった。 *** 「なぁ、風太。合コン誘われたんだけど行く?」 「マジ?!合コンとか久しぶり!行くに決まってんじゃん!」 実を言うと。俺らは、付き合っている”フリ”をしている。 俺たちの通う高校は、全寮制男子校という外界から切り離された世界にある。もちろん女子と触れ合う場はなく。そうなってくると男同士で付き合うのも自然な流れといえよう。…しかし、染まることを頑として拒む生徒も確かにいることを忘れてはならない。その残念ながら少数と言って過言ではない生徒たちの中の2人が、俺と風太だ。一年の時、寮で同室になった俺らは防護策として考え出した。俺らが付き合ってることにしちゃえば、面倒ごとが少なくなるのではないか、と。パートナーがいれば下手に手を出して来ないだろう。牽制になる。 実際、何事もなく1年間を過ごすことが出来たのだった。 -
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