白線よりお下がりよ

5/5
前へ
/310ページ
次へ
そういえば風太も何つけるわけじゃないけどいつも良い匂いがする。俺も同じ洗剤使ってるんだけどなんか違うんだ。なんでだろう。 「学校どんな感じなの?」 「ん?学校はねー…」 ふと横目で風太の指が女の子の髪に触れたのを見た。いつも俺だけを触るその指で、弄ぶようにクルクルと。女の子は満更じゃなく顔を赤くする。それ、風太のただの手癖だから。別に、君に気があるからとかじゃないんだよ。 「宗馬くんどうしたの?怖い顔して」 「…怖い顔してた?」 「うん」 「あー…なんか気分悪いかも。ちょっとトイレ行ってくる」 *** 流れてくる水を手の平に溜めて、ザバッと顔にかけた。 (ー俺、おかしいぞ) せっかく女の子と触れ合う機会なのに、俺は風太のことばかり見ている。あまつさえ俺は、対抗心を燃やしていたのだ。風太ではなくあの女の子に。 「信じ、らんねぇ…」 いや、これはたぶん違う。恋とかそういうのじゃなくて、付き合うフリをしていたから距離感が一時的におかしくなっているだけだ。錯覚だ。もう少しすれば、きっと治る。そうだ、そうに違いない。…そう思うと落ち着いてきた。濡れた頬を気合入れのため両手で打つ。 「そうだよ。まさか俺が、染まるわけないじゃんね」 end
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加