I'm all thumbs.3

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ハナは俺が守る。道を外れないように、幸せな人生を送れるように。自分の気持ちに封をしてハナの隣に立つことを決めたのだ。たかが会って数ヶ月の春田なんかに、俺の大事な大事なハナを渡すものかと俺は思っているのである。 「春田も、帰っちゃったの?」 「うん」 「え…そっか」 見当違いの彼の優しさ。自分への評価が低すぎて、こういうズレが時折おきる。 「なんかね、急性の腹痛と下痢と嘔吐が襲ってきたみたいで」 「だ、大丈夫なの、それ」 「うん。もう治ったって」 ハナは、春田が好き。春田は、ハナが好き。二人は、両想い。だけどそれに気付かなければきっと彼らは何事もなく終わっていくのだ。そして、その運命を握っているのは彼らではなく、優しくない人間代表の、俺。さてどうしたものか。 「春田にも、LINEで謝っとく…」 「うん。そうしときな」 緊張している時は前髪をいじる。悩む時は腕を組んで首をかしげる。全部全部、ハナの癖。 「あ、なぁなぁ。俺の写真撮って春田に送ってやって。看病なうって」 春田め。せいぜい羨ましがれば良い。 countine
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