目下努力中なのです

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「富士見!ダラダラすんな、仕事はたくさんあるんだぞ」 「は、はいッ!」 桜も散り、青葉が目に麗しくなる初夏。風紀委員に任命された俺は、厳しい委員長の下、目下努力中なのです。 … 「うあ~!今日も疲れたぁ」 仕事を終え外に出ると、日が延びているというのにもうすっかり暗い。そんな日が1週間以上続いていた。 「富士見くん、今日も頑張ってたね」 「いえいえ!俺なんか委員長に怒られてばっかで…」 隣を歩くのは、一つ年上の篠田先輩。物腰が柔らかく穏やかで相談にも乗ってくれる優しい人だ。初日から助けられ、この先輩のおかげで今日まで挫けずやってこれたのだと冗談ではなく思う。 「きっとね、委員長は富士見くんに期待してるんだよ」 「ま、まさか」 ちっともそんな風には思えない。「やる気ないなら辞めちまえ」と言われたばかりなのだ。 「君が優秀だからさ、たぶん育てたくなっちゃったんだろうね」 篠田先輩のフォローの言葉に涙さえ出てくる。次の風紀委員長には絶対に彼を推薦したい。リーダーには厳しさも必要だがやはり優しさが第一だ。 「委員長って自分にも人にも厳しいから、最初は怖いと思うけど、慣れてくれば平気だよ」 本当にそうだろうか。俺は校舎を振り返り、まだ電気の付いているあの一室にいるであろう委員長に思いをはせる。 「ちゃんと休んで下さいって、言ってるんだけどね」 -
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