目下努力中なのです

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俺だって、委員長を尊敬してはいる。彼ほど自分自身にストイックな人を見たことはない。だけどそれを人に求めるのはいかがなものか。あの人を睨む瞳の鋭さを忘れられない。思い出すだけで縮みあがりそうだ。 「…まだ俺には無理そうです」 * 「生徒会に派遣?」 作業に慣れ、心に少し余裕が出来てきたある日。そんな話が舞い込んできた。 「俺が、ですか?」 「うん。この時期生徒会の方が忙しくなるから、何人かヘルプで行ってもらうんだ。去年は僕も行ったし、今年も行くよ」 「へぇ…」 「そのまま補佐になるケースも結構あってね。今の1人も、もとは風紀だったの、知ってた?」 「初耳です」 生徒会に、かぁ。あの煌びやかな集団を思い出し、俺には場違いだろうなと思う。家柄が良いわけでも金持ちなわけでもない。少しだけ優れた頭で必死こいて、ここに入学した口である。まぁ、生徒会に少し憧れもないわけではない。風紀とはまた違う、いろいろな特別待遇があると聞く。 「どんな感じでした?」 「んー、去年の生徒会長は優秀な方だったから僕らのやることなんてちょっとした雑務だけで楽だったかな。一日一回はティータイムがあって、みんなでお菓子食べたりもするし」 走り回って委員長に叱られる毎日と比べるとそこは楽園のように思えてくる。きっと出てくるお菓子も有名なお店の食べたことのないものに違いない。 「俺、行きます!」 -
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