目下努力中なのです

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「良いでしょう、別に。彼、居心地良さそうにしてたし」 「そんなことになったら僕が怒られるんだ。安易な勧誘は困るし、富士見にこんな性格の悪い集団は向いてないよ。澤村副会長様にはお似合いだけど」 「どういう意味かな?」 「そのままの意味だけど?」 どうして2人は笑顔なのに、後ろに龍と虎が見えるんだろう。俺はヒヤヒヤとしながらも止めることはできない自分の度胸のなさを痛感した。 「澤村はもとは風紀だったんだ」 いつの間にか近くに来ていたらしい会長が俺にそう耳打ちをする。なるほど、この前の話の人は副会長のことだったのか。 「いや、でも本当富士見は生徒会に是非とも欲しい人材だ。仕事も早いし的確だし。書類のまとめ方なんて、会計たちに見習って欲しいくらいだよ」 「ハハ…嬉しいです」 そりゃ、委員長にしごかれましたから。ここがダメ、これが良くない、そんなふうに何回も何回もやり直しさせられれば嫌でも覚える。褒められるたび委員長との苦い思い出が顔を出した。でも今それが、確かに糧になっている。褒められるのは委員長の指導の賜物なのだ。 こっちに手伝いに来てから、もう2、3日委員長の顔も声も聞いてないし見ていない。俺もどうしてしまったんだろう。あの厳しい声が恋しいだなんて。 … 「富士見!」 廊下を歩いているところを、後ろからふと声をかけられた。 -
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