目下努力中なのです

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「あ、会長」 「今日で最終日だな」 「…はい。1週間ありがとうございました。最終日、気合を入れて頑張ります」 長いようで短いようで長い1週間だった。俺はお辞儀し感謝を述べる。 「…そのことなんだが」 「?はい」 「このまま、生徒会にいてくれないか」 真剣な表情から冗談ではないことが分かった。まさか本当に声がかかるとは。 「風紀をやめて、生徒会に入れということですか」 「そういうことになる。…風紀委員長の下で働くのには苦労してるんだろう?」 会長の言葉にぐっと喉が詰まる。 「…確かに、委員長に怒られてばかりなのはもうウンザリだと、思ってたんです。このお話を聞いて、生徒会に入りたい、とも」 「それなら、」 「でも!俺、気付いたんです。褒められるたび、そこには委員長がいて、全部俺のための指導だったんだってことに。馬鹿でした。だから、たいへん光栄なお誘いなんですがーー」 「このお話はお断りします」 続きの言葉を掻っ攫っていったのは、久しぶりに聞く恋しかったあの声。 「富士見行くぞ!お前の仕事は山のようにあるんだ」 振り返る間も無く腕を掴まれ、引きづられる。俺からは背筋の伸びた大きな背中しか見えない。こんな頼り甲斐のある背中に俺はいつかなれるだろうか。俺は引きづられるのをやめ、頑張って大股で委員長の横を歩く。 「はいッ!」 絶対いつか、貴方に認められてやる。そういうわけで厳しい委員長の下、目下努力中なのです。 end
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