吉田くんと踊ろう

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「すごいすごい」 うわー、と鈴村は感嘆の声を上げた。今日は学校行事の一つである、ハロウィンパーティーが行われている。大ホールに全校生徒が集まっており、それに加えてみんな個性溢れる仮装をしているものだから、なかなか圧巻な風景だ。 「去年来なかったから知らなかったけど、みんなクオリティ高いんだね」 「まぁ、暇な金持ちの集まりだからな」 魔法使いにミイラ男にフランケンシュタインに。特殊メイクをしている生徒もいて、学生が開催するハロウィンパーティーの域を超えていた。 「目の保養ですなぁ」 いつもは眠た気な目を爛々と輝かせて通り過ぎる生徒を見る鈴村。彼の仮装と言えば、白髪のウイッグに細長い角、白く垂れた耳をつけていて、服装は白いふわふわとしたセーターと、これまた白い膝丈の半ズボン。小さな尻尾もちゃんとある。イメージは、ヤギであるらしい。 「おい、周りばっか見てんなよ」 吉田は対称的な黒づくめだ。黒いピンと立った三角耳に、黒いタートルネックとスキニー。犬のような尻尾が揺れる。開いた口から鋭い犬歯が見えた。 鈴村は吉田の言葉に、しょうがないなぁと言わんばかりの顔で「吉田も狼の仮装ちゃんと似合ってるから安心して」と彼の肩を叩いた。 「ちゃんと前見ろって意味で別に妬いてるわけじゃねぇよ」 -
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