吉田くんと踊ろう

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「すいません、その仮装もしかして『暴風雨の夜に』ですか?」 そんな2人に不意に声がかかった。見ればアリススタイルの美少女が興奮気味に頬を染めて立っている。ブロンドの髪に、西洋人形のような整ったお顔。水色のふんわりとしたワンピースに白いレースのエプロンがよく似合う。絵本から飛び出てきたような姿に鈴村もまた目を輝かせた。 「そうです~。仮装、すごい本格的ですね!ていうか後ろにいらっしゃるイケメンの方は彼氏さんですか」 鈴村は彼の後ろの壁に寄りかかって周りに鋭い目を効かせている、アリスのウサギの格好をした人に目をつけた。 「え、あーそうです彼氏です。そちらの背の高い素敵な狼さんは?」 「ん?んー…お母さんです」 「なんと!強面でオカン属性なんて素敵ですね」 「俺もそう思…ハッ!まさか同志様ですか」 「そのようですね」 鈴村と彼ーー春樹は固く手を握りしめあった。こんなところで出会うとは、と2人はひとしきり盛り上がり始める。 「おい……」 置いてけぼりの吉田は、少し離れたところで待つことにした。壁に寄りかかって鈴村を見失わないように時折目をやる。ふと隣を見ると、どうやら自分と同じような状況にいる人がいた。今鈴村が話してる生徒の連れだろうか。暇を持て余していたので、吉田は彼に話しかけた。 -
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