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「二組の文田だよな?」
結構有名な生徒だったから、吉田は彼を知っていた。声をかけられた彼は、警戒心に満ちた顔を吉田に向ける。
「あ、俺吉田って言うんだけど、今彼と話してるやつの保護者です」
その表情に思わず怯み、敬語になった。しかし吉田の説明で文田はやっと顔を和ませる。
「あ、悪い。気ぃ張ってて」
「いや、気にすんな。あの子、文田の彼女?…って聞き方おかしいか。にしてもあんな可愛い子学校にいたっけ」
「ん。まぁ分かんないくらいにメイクしてあるから、それで良い」
なるほど。どうしてあんなに警戒していたのか合点がいった。文田は人気があるし、気を遣わなければならないことなのだろう。
「でも、吉田の子も可愛いから気をつけたほうが良いよ」
「分かってる」
会話をしながらも、牽制を忘れてはいない。彼らを見て何やらヒソヒソと話す輩に無言の圧力をかけていた。その様子は本当の狼も逃げ出すだろうと、文田は思う。話に没頭している彼らは吉田と文田が守っていることには終ぞ気付かず、ホクホクと満足気な顔をしてそれぞれに向かって帰ってきた。
「ごめん吉田。エキサイトしちゃって」
「あんな楽しそうなお前久しぶりに見たわ」
「吉田といる時も楽しいよ」
「…そうか」
今度は少し寂しさを感じてたので、フォローをありがたく頂戴する。
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