吉田くんと踊ろう

5/7
前へ
/310ページ
次へ
ちらりと彼らの方を見ると、やはりストッパーになっているのは文田のようだ。諦めたようであるけど、優し気な表情で恋人を見ていて、なんだか親しみが湧く。どんな会話があったのか、アリスがくるりとこちらを向いた。 「なぁ、四人で回らない?そっちの方が楽しいし」 「え、それとても良い!」 また鈴村と春樹が2人で先に歩き出す。吉田と文田は顔を見合わせ苦笑すると、その後ろを周りからガードするようについていった。 「鈴村!前見ろって言ってんだろ」 「ハル、転ぶなよ」 後ろから注意しても、はーいという気の無い返事が返ってくるだけ。人にぶつかりそうになったら腕を引き寄せ、何かに躓いたと思ったらスッと腕を回して体を支える。 「…苦労してんな」 「そっちこそ」 世話を焼かれる本人たちは意に介さず、鈴村などはなんだか嬉しそうに「うへへ」と声を上げた。 「まったく…。俺は来たくないって言ったんだけどさ、鈴村が行くって聞かなくて」 「どうせ萌えの為とでも言ったんだろ」 「…お前本当分かってる」 「まぁ、でも楽しいもんだろ?」 「楽しいんだけどよ、俺踊れないんだよな。なんでこの学校イベントの度に踊んの?庶民には理解できん」 吉田は苦い顔をする。 -
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加