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ちらりと彼らの方を見ると、やはりストッパーになっているのは文田のようだ。諦めたようであるけど、優し気な表情で恋人を見ていて、なんだか親しみが湧く。どんな会話があったのか、アリスがくるりとこちらを向いた。
「なぁ、四人で回らない?そっちの方が楽しいし」
「え、それとても良い!」
また鈴村と春樹が2人で先に歩き出す。吉田と文田は顔を見合わせ苦笑すると、その後ろを周りからガードするようについていった。
「鈴村!前見ろって言ってんだろ」
「ハル、転ぶなよ」
後ろから注意しても、はーいという気の無い返事が返ってくるだけ。人にぶつかりそうになったら腕を引き寄せ、何かに躓いたと思ったらスッと腕を回して体を支える。
「…苦労してんな」
「そっちこそ」
世話を焼かれる本人たちは意に介さず、鈴村などはなんだか嬉しそうに「うへへ」と声を上げた。
「まったく…。俺は来たくないって言ったんだけどさ、鈴村が行くって聞かなくて」
「どうせ萌えの為とでも言ったんだろ」
「…お前本当分かってる」
「まぁ、でも楽しいもんだろ?」
「楽しいんだけどよ、俺踊れないんだよな。なんでこの学校イベントの度に踊んの?庶民には理解できん」
吉田は苦い顔をする。
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