繋いだ手

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あの時、あんなに強く 繋いだ手は、なんでこんなに 簡単に解けちゃったんだろう。 …ギシ、ギシとベッドが軋む音がする。 それは耳慣れた音ででも俺はそれを 扉の外から聞いていた。 (またか。) 中に乗り込むアクティブさは、あいにく 俺は持ち合わせていなくて。 しかも何度目かのそれは もう、そんな気さえ失せていた。 たった数ヶ月の、短い恋。 お互いの学校も年齢も、もしかしたら 本当の名前すら知らない。 それでも初めてこんなに 人を好きになったのに。 なのに。 我慢するの、 (…もう、疲れちゃったなぁ。) こんな恋、俺には向いてない。 携帯を取り出して 一番上にある履歴にかける。 プルルル、プルル、 『…ぁ?なんだよ。』 誰かとSEXしてる時 普通、恋人の電話出るかね。 「やっほー、ゆき。 今までありがとう。 ほんと、好きだよ。 愛してるよ、ゆき。 だから… バイ、バイ。」 (大好きでした。) 狼のような愛しい人。 返事が返ってくる前に切った。 彼の部屋の郵便受けに 鍵を入れたら、カランと音をたてた。 部屋の中の慌てた音に 満足して、その場を後にする。 『シロ、好きだ。』 もう一回だけ そう言って欲しかったよ。 「あ"あ"ぁぁぁっ!」 あぁ、クソ。 お前は最低野郎だ、ゆき。 -
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