こちら、放送局。

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そしてある時、一人の生徒が 親衛隊の制裁にあっているのを 発見した。 「ちょっと、あんた!この頃 松崎様に近付いてるでしょ!」 駆け付けようとして 予想外に出てきた自分の名前に 足をとめる。 「図々しくコーヒーなんて 置いちゃってさ! 献身的ですアピール?」 (…は、い?) 「そんな、わけじゃ。」 初めてしゃべった、その子。 小さかったけど 人の心に沁みる声。 …聞いたことがある声だった。 (どこで聞いた?) ラジオだ、ラジオ。 それと…そうもっと前に。 そして、今。 「おい、お前らッ!! なにやってんだ。」 声を上げると、急いで散っていく たぶん俺の親衛隊たち。 黒髪の、いたって普通の顔立ちの 少年が俺を見た。 「…また助けられ ちゃいましたね、苦労性さん。」 苦笑を浮かべる彼。 「…お前だったの?」 「貴方があの時、僕の声が素敵だって 言ってくれたから。」 頑張っちゃいました。 そう言って、彼はまた笑った。 「貴方を今度は助けたくて。 …結局、僕がまた。」 悔しそうな顔をする彼の腕をとる。 「お前には十分 助けられたよ。 だから、何度も手紙を送った。 読んでくれる度、毎回 舞い上がってた。」 「…でも、今まで気付か なかったんですね。」 今度は拗ねた顔をした。 この前、会いたいと思ってた人に 今はこんな近くで たくさんの表情を見れて 俺は、恋するしか ないんじゃないか? 考えを巡らしていて返事が 遅くなった事を、彼は 違う意味で捉えた。 「あ…顔、普通ですみません。 幻滅しましたよね。」 (あぁ、周りのイメージにこの子は どんだけ悩まされたんだろう。) 「俺はちっともそうは思わない。 コンは、可愛いよ。」 ボンッと赤くなった顔を、彼は 両手で覆って、へたり込んで しまった。 ほら、可愛い。 「…ッ僕、貴方が好きです。」 この言葉はラジオじゃ聞けない。 俺だけに向けた言葉だ。 残念だな、コンのファンたちよ! 「うん、俺もずっと前から。」 君の声に恋してた。 『おはようごさいます。 今週もコンがお送りしますよー! さて、先日僕はコーヒーに 挑戦しました…』 end
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