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「今晩は、お兄さん。」
街頭の灯りに照らされた、目元のほくろが
特徴的な少年は艶然と微笑んだ。
ぼうっと見惚れた男は楽園へ導かれる
ように少年と共にホテル街へと向かう。
少年の足取りは軽かった。
ーーーーーーー
「2-A松本!
シャツがだらしない、しまいなさい。」
「副委員長、厳しいよぉ。」
渋々叱られた生徒はワイシャツを
中に入れる。
「私は風紀です。当たり前でしょう。」
メガネをかけた黒髪の少年は
冷たく目を細めた。
「人生ゆる~くやってかなきゃ
つまんないって!青桐風紀副委員長の
楽しみってなんなわけ?」
そんな松本の問いに青桐は滅多に
見せない仄かな笑顔で言う。
「何だと思いますか?」
「…質問返しってせこいなぁ。」
「貴方には関係ないことでしょう。
ほら、もうすぐ授業始まりますよ。」
やべっ!と松本は言って、バタバタと
廊下を走って行った。
教室へと向かう生徒の
流れに従いながら青桐も歩き始める。
「楽しみ、ねぇ。」
ボソッと青桐は呟いた。
そんなの、こちとら思春期の男子だ。
決まってんだろ。
「セクロスしたーい。」
俺の小さな独白は廊下の喧騒の中に
消えていく。
(昨晩の男は当たりだったなぁ。)
今度はいつ街に出掛けられるか、それを
歩きながらずっと考えていた。
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