君の心が満ちるまで

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「ねぇ。」 「ッほわ!?」 背後から急に声を掛けられ 昨日のピンクな記憶を思い返していて 油断していた俺は、思わず素っ頓狂な 声をあげてしまった。 恐る恐る振り返ると、申し訳なさそうに 眉を下げこちらを見下ろす 黒髪の背の高い生徒。 その顔には見覚えがあった。 「ハァ…向井会計。 驚かせないで頂きたい。」 バクバクと煩い心臓を手で抑える。 「ごめ…ん。」 シュン、とする姿に犬の耳が見える 幻覚に襲われた。 くそかわ…! 頬が緩みそうになるのを必死で堪える。 気持ちを切り替えるために 一度咳払いして、おれは話を続けた。 「それで、俺に何か用でしょうか?」 生徒会では稀なマトモな人物であり 風紀にお世話になるはずはなく 俺に心当たりもない。 何か問題でもあったのだろうか。 少し迷ったように視線を巡らせる彼が 口を開くのをじっと待つ。 ーそして、やっと彼が発した言葉は 動揺を隠しきれないものだった。 「…昨日の、夜…なに、してた?」 彼の目は確信に満ちたもの。 サァァァァと血の気が引く。 冷や汗と脂汗が止まらない。 俺のトップシークレットぉぉ! 「な、なんで、」 「…偶然、見つけた。 メガネ…してなかった、よね?」 -
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