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間合いを一気に詰めて拳を振るう。
当たる直前、彼が飛んだ。
「くっ」
当然俺の拳は空を切りバランスを崩す。
そのまま地面に倒れあえて転がると
目の前に蹴りが落とされた。
(あっぶねっ)
すぐ立ち上がり再び向き合う。
めっちゃ強いじゃんかこいつっ!
今度は相手から攻撃を仕掛けられる。
次々に繰り出される技は
全部鋭くて、重い。
避けるだけで精一杯で
ついに、彼の蹴りが腹に入った。
「、かはっ…!」
軽く吹っ飛んで何回か
バウンドしてやっと止まる。
彼が近付いてくる気配がするが
体がいうことを聞かない。
迫る足音に、恐怖を覚える。
(くそっ、来んなっ、来んなっ)
俺に向かってくる手に殴られる、と思い
ぎゅっと目を瞑った。
「はい、俺の勝ちー。」
新たな衝撃に備えた俺にポン、と頭に
大きな温かい手が優しく乗せられ
撫でられる。
「大丈夫?ごめんね、葵さん。」
さっきまでの殺気はどこへやら。
あまりに男前な笑顔の平凡が
情けない顔をした俺を覗き込んでいた。
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