狼と犬って紙一重

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ーそして、観月を誘った当の本人は 小宮山の隣で黙って気配を消していた。 「…馨君?」 観月は恐る恐るといった風に、彼に話し かける。黒髪にところどころ青いメッシュ をいれた彼の風貌はまさに不良。 平凡で目立たない容姿の観月とは正反対の 位置にいると言って良いだろう。 「てめぇがいると、俺らが映えるだろ。」 それだけ馨は言うと小宮山の頭に手をおき 行くぞ、と優しく声をかけた。 そんな彼の態度に小宮山は満足そうに おう!と返事をして歩き始める。 観月も後に続いた。 ーーーーー 「「キャァァァァァァッ!」」 三人が食堂に入ると歓声があがった。 馨には公然と近寄る者は少ないが見目が 良くファンや子弟になりたい者も多い。 転校してきて数日の小宮山も家柄や類稀な 容姿でこの学園で認められつつある。 観月においては、妬みや怒りの視線を 向けられていた。 「馨、すごい人気だな!」 「違えよ。海斗に注目してんだ。」 食堂は混んでいて、三人は何度も生徒に ぶつかってしまう。 馨が痺れをきらし大声をあげた。 「煩いし、邪魔だ!どけ。」 周りにいた生徒は彼の怒りを買うのを恐れ すぐに道を開ける。痛いほど浴びる視線に 観月は溜め息を吐いた。 -
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