狼と犬って紙一重

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パタン、と食堂の扉が閉まった。 一気に喧騒が消える。廊下に人は居ない。 「…水、申し訳ございません。」 驚くべきことに、その丁寧な言葉は 馨から発せられた。 そしてそれは、観月に向けられたものだ。 「僕の指示だ。構わない。 なかなか有意義な食事だった。」 その観月も食堂の扉を見据えながら 傲然とした態度で返事をする。 濡れた髪を掻き上げ、後ろに撫でた。 先程とは雰囲気がまるで…別人。 彼らは静かな廊下を歩き出した。 ーーーーーー 「会長、副会長、室井会計、双子、小宮山。 …奴らは総帥の器じゃない」 濡れたワイシャツやジャケットを馨は 観月から脱がしていく。 観月はされるがまま、口を開いた。 ワイシャツのボタンを外しながら 馨もそれに応える。 「成田礼会計は?」 「…あれは何よりも勘が良い。自分を信じ それを実行する行動力もある」 観月は満足気に口の端をあげた。 「では成田グループは成長する見込みが あるということですね」 「そうだ。だけど、他は危ういな。 このままじゃ八大財閥の幾つかが 崩れていくだろう。」 残念だ、と溜め息混じりに呟く。 「後継者の教育を怠った彼等が 悪いのですよ。」 「彼奴らは自分の力を過信している。 下で働く者への配慮も知らない。 どいつもこいつもだ。」 失望の色が観月に浮かんだ。 -
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