狼と犬って紙一重

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「…僕は、彼等に後継者としての資格が あるかを調べに来た。」 「さようでごさまいます。」 服を脱がし終えると、観月の傷一つない 身体が月明かりに照らされた。 恥ずかしがるわけでもなく彼は話を続ける。 「でもさ所詮、彼等は転がされるだけだ。 …僕の手によって。」 開いていた手をゆっくりと握りしめた。 「ー全ては貴方の手の中に。」 馨は膝をつき恭しく彼の握りしめられた 手を開き、甲に口付ける。 「…お前は僕の犬で良いの?」 「"榊原家"は"神条院家"に絶対の忠誠を 誓っていますので。」 「死んでって言ったら死ぬ?」 「貴方様がお望みなら。」 動じない馨に、観月は目を細めて笑った。 「そういえば帰りがけに小宮山につけられ た盗聴器回収してたね。…良い子だ。 彼等の弱味も神条院が全て掌握しなければ ならないから。これからも調査を進める。 お前は…今まで通り一匹狼を演じて 周りと距離をとりながら、生徒会と接触 していってくれ。」 「心得ております。」 そう応えた馨の頬に観月の細い腕が 伸ばされた。 「…でも、…や、…だった。」 「観月様?」 消え入りそうな声が耳にやっと届く。 「演技だとしても、やっぱり馨に冷たく されるのは嫌だった。」 -
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