僕のメシア

2/8
前へ
/310ページ
次へ
僕には恋人がいる。 何の取り柄もない平凡だけど、そんな僕を 愛してくれる人がいる。その人はとても カッコよくて頭が良くて、人の先頭に 立って引っ張っていけるような完璧な人。 「なんで、僕のことを好きに なったんだい?」 「理由がいる?」 質問を質問で返されてしまうし それになにより完璧な回答で困る。 具体的なことを言われたら、きっと僕は 意識して普通じゃいられなくなるし 昔の出来事をもってこられようものなら 美化された思い出の恥ずかしさで 死んでしまうかもしれなかった。 「…カッコいいねぇ。」 僕は咄嗟にそんな事は言えない。 返事に3日かけていい、と言われても僕は 彼の好きなところを思いつく限り言うし 出会った時の出来事を話すだろうから。 僕があまりにも感心して言うので 彼は、よせやいと笑った。 大衆の前では決して動かない頬の筋肉は 今では思う存分緩められている。 固まってなくて良かったと僕は毎回ホッと する。彼のこの表情が独り占めできるのは とても嬉しいことだったから。 -
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加