僕のメシア

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毛の生えた汚い手が、僕を触ろうと 伸びてくる。気持ち悪い脂ぎった顔。 汗臭い饐えた匂い。 その時、初めて"恐怖"を感じた 隣で転校生が小さく悲鳴をあげた。 何人もの手が彼の体をまさぐっている。 …こんな奴に好き勝手に蹂躙されるのか? 僕は指一本触れて欲しくなんかないのに。 僕は彼のものなのに。 (そうだろう?) 「…みや、さん。」 「なんだ?助けを呼んでも誰も くるわけねぇだろ。」 馬鹿にしたように鼻で笑う。 彼の手がどんどん近付いてくる。 僕は強く目を瞑る。 「なに、怖いの?可愛いねぇ。」 僕は口で大きく息を吸った。 出来る限りの声で僕は叫ぶ。 耳にじゃない、心に届くように。 「助けて、史哉さんッ!!!!」 僕のメシアを召喚する、魔法の言葉。 「だから誰も来ないって。」 『良いか?何かあった時は、名前を呼んで 3秒心の中で数えろ。』 3、 「僕は誰のものだと思う?」 2、 「はぁ?その、フミヤっていう奴だろ。 誰だか知らねぇがきっと悲しむだろう なぁ。恋人がヤられるなんて。」 1、 「僕も、そう思うよ。」 ードンガラガッシャーンッ!!! 「うわぁぁぁ!」 扉が急に吹っ飛んだ。埃が舞う。 『そしたら、俺が助けに行くからな。』 「良い子だ…穂春。」 待ち望んでいた聞き慣れた声が鼓膜に 響いて、僕は危うく泣くところだった。 -
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