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「精神的に助けてあげてるのよ。だって、男ばっかりじゃ悩みも相談できないじゃない? ユーミンは繊細な女の子なのに」
「海を向けば海の…………はい」
「おまえがいつ相談に乗ってやったって言うんだ? おまえ、人の話なんか黙って聞けるタイプじゃねえだろうが」
「言いがかりはよしてよ。あたしくらい適切な助言をずばっと言える素敵でかわいい乙女はいなくてよ」
「ずばっとは言うけどな、間違っても助言にはなってねえよ」
「次……敵か味方かトリックスター」
「間違ってもって何よ。少なくともあんたの存在よりは役に立ってるわ」
「なんでだよ。俺はユーミンが街にいた頃からずっと見てるんだぜ」
「それならあのランプと同じね。あんたに油を差したって夜光るくらいの役にも立たないけど」
「どんないちゃもんだよ。おまえだって同じだろうが」
「あら、あたしは光るわよ、いざとなったら」
あまりに堂々と言うので、ヴィーは一瞬判断に迷った。白く輝く蛇皮には確かに説得力がある。しかし同じ胴体を共有するリタは、あまりのでたらめに呆れかえっていた。
ユーミンは二階から外をあわただしく動き回って、洗濯と掃除を済ませた。キッチンに戻ったとき、クッキーは頃合いに冷めていた。彼女はそれを一枚ずつ同居者に配ると、残りを小分けにして包み外出用の布袋にしまった。一同は、ユーミンがこれからどこかへ出かけるつもりでいることを悟った。
少し風が出てきた。洗濯ものが煽られてはためいている。ユーミンは申し訳なさそうに振り返る。
「リタ、リコ、頼んでいい?」
もちろん、とリタが即答する。
「留守番なら頼まれるまでもないわ。降り出したら取り込んでおくわね。ただし紐に干すのは無理よ」
「……ありがとう」
ほっとしたように笑ってユーミンは二階の自室に上がった。じきに外出着に着替えて降りてくる。
「おみやげ忘れないでよ。留守番のお駄賃よ」
抜け目なくリコが言う。
ユーミンは荷物を抱えると、それじゃあよろしく、と家を出た。Jとヴィーに対しては何の指示もない。二匹はしばらく置いてきぼりをくらった態だった。
少しして後を追った。ヴィーは慌てた様子で、Jはおっとりと。
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