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成人式が終わった後、リョータが俺に提案してきた。
『これから、ナルミの墓参りに行かんかえ?ビール持ってよ』
『そうやにゃあ‥‥‥‥ナルミも三人で呑みたいって言いよったしにゃあ』
『ほんなら、そこのコンビニ寄ってこうや』
あれから少しは大人になったのだろうか。
こうして、またリョータと普通に喋って並んで歩けるようになっている俺。
くだらない話に普通に笑えてる俺。
多分、リョータも俺も両方がまだナルミのことが好きだ。
当の本人であるナルミはもういないけれど。
『なぁリョータ』
『何よや?』
『俺、今からナルミにコクるわ』
『‥‥‥‥やっと、その気になったか。遅いわ、アホ。墓に向かってコクっても本人もうおらんき』
『そうやにゃあ‥‥‥‥俺は本当にアホや』
時間は巻き戻せない。
人生はやり直しがきかない。
ナルミは俺に教えてくれた。
やりたいことは、やりたいと思った時にしなくては後悔するということを。
やらなくて後悔するより、やって後悔した方が良いんだと。
きっと、ナルミのことは生きてる限り忘れないだろう。
ずっと後悔もし続けるのだとも思う。
それでも俺は歩いていかなければならない。
ナルミのいなくなったこの世界で。
怒ったり、笑ったり、泣いたりしながら。
俺は生きてるから。
俺はスマホのラインを開いてunknownになったナルミとのやり取りの場所を見た。
カズの先生姿、見たいな}ナルミ
『‥‥‥‥頑張るよ』
そう言って空を見上げると、雲一つない真っ青な空にひとすじの飛行機雲が浮かんでいた。
――了――
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