10人が本棚に入れています
本棚に追加
『カズ!!久しぶり、元気やったかえ?』
満面の笑みを浮かべながら色とりどりの人込みを縫うようにして現れた幼馴染みのリョータに、俺はなんとなく照れ臭くて20%くらいの笑顔で応える。
『よぉ。こんなにいたんだな、人‥‥‥‥』
周りは振り袖の着物女子やスーツ男子達が、ところ狭しと云わんばかりにひしめき合っている。
僅かだが、派手なドレス女子や奇抜な頭をした羽織袴男子もちらほら確認出来る。
今日は地元の成人式だ。
華やいだ雰囲気に包まれている。
辺りを見渡しながら思わず口をついて出た俺の言葉に、リョータも心なしか感慨深げに頷く。
『そうやにゃあ‥‥‥‥地元って言うても、俺らの同級生ってこれだけおるがでね。この中のどんだけの奴らが県外に出ていって、どんだけの奴らが高知に残っちゅうがやおぅかね。仲のえい奴以外は全く分からんけんどよ‥‥‥‥』
そう言いながら煙草の箱を取りだし、斜め前方にずれていく濃紺スーツ姿のリョータになんとなくついていく。
リョータは身長は170cm弱とあまり高くはない奴だが、全体的な身体のバランスが良い為スーツ姿がやけに様になっていた。
『そのスーツえいやん。どこで買うたが?』
そう言ってメンソールの煙草を口に加えると、リョータは慣れた仕草で洒落た細工のzippoを開く。
『あぁ、コレ?東京で。‥‥ていうか、煙草なんか取り出して大丈夫なが?ちゃんとハタチになったがかえ。コンビニで年齢確認されまくりやろ』
『やっぱりね。高いがやろ?‥‥って、ヒドイこと言うにゃあ。俺、もうとっくに二十歳やき。そら、年齢確認もされるろう。どうせ俺、お前と違ってベビーフェイスやきね。おかげで免許証持ってコンビニ入らないかんき』
『お前のスーツとそんなに変わらんがやない?知らんけんど。やっぱり年齢確認されゆうがかや。まぁしょうがないにゃあ‥‥』
自然と土佐弁に戻っている自分にふいに可笑しくなる。
どれだけ東京の言葉を喋り慣れようと、自分のルーツはやはりここなのだと改めて思い知る。
東京から飛行機に乗って1時間前に高知に帰り着いたばかりだった。
空港まで迎えに来てくれた祖父の車でこの成人式会場までやって来た。
最初のコメントを投稿しよう!