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俺とリョータとナルミは小学校からの付き合いだった。
中学校、高校の部活は同じサッカー部で、ナルミはマネージャーとして入部した。
俺達の通っていた中学校、高校のサッカー部は県内でも一、二位を争うような強豪校で部員数も多かった。
身長の高かった俺は、中学校時代にサッカー部の監督だった先生に見込まれてゴールキーパーになった。
高校生になって。
リョータは器用な性格が幸いしてか、いつの間にか花形の有名エースストライカーになっていた。
リョータが試合で得点を挙げる度に応援に来た女子達から歓声があがり。
得点を挙げたリョータの周りには他の奴等が嬉しそうに群がる。
ベンチに座っていたナルミも、一つ上の先輩マネージャーの華さんとリョータが点を取る度に抱き合って喜んでいた。
リョータはジャニーズ系の甘いルックスと人懐っこさで、中学校、高校と男女問わずの人気者だった。
他校にもファンクラブが存在していたらしく、とにかくモテていた。
俺は後ろのゴールからそんな光景をいつも見つめていた。
時々、前のポジションでやってみたいなと頭を掠めたこともあった。
自由に走り回っているリョータがキラキラ輝いて見えて。
それが、羨ましかった。
――いや。
ナルミのまっさらな笑顔を作り出せるリョータが、あの時は羨ましかったのかもしれない。
気づいてなかったから。
俺がゴールを守った時に向けていた、ナルミの祈るような真剣な眼差しを。
華さんが高校を卒業する時にこっそり教えてくれた。
《ナルミのあんな真剣な顔つくれるのはアンタだけで。アンタは幸せ者やね》
俺は、華さんから高校二年生のバレンタインデーの日の部活後に告白されて付き合うことにした。
それは、部活が始まる前の誰もいない部室でナルミがリョータにチョコレートを渡しているところを見たからだった。
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