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全ては、ボタンの掛け違いだったのかもしれない。
華さんとは、彼女の高校最後の卒業式の日に別れた。
別れを切り出してきたのは向こうだった。
それなのに、華さんは何故か泣いていた。
その理由は今も分からない。
リョータとナルミも、俺と華さんが別れた後に別れた。
そして高校を卒業するまでの一年間、俺達三人は微妙な距離感を感じながら学校生活を送った。
以前のように屈託なく三人で笑いあうこともなくなっていた。
リョータとナルミが別れた理由は、お前のせいだとリョータが俺を殴ってきたから、多分俺が原因なのだと思った。
だからといって、俺はナルミに気持ちを告げる勇気もなく。
ナルミも俺に何か伝えてくるわけでもなく。
リョータは他の同級生の奴等とつるむようになり。
そのまま、俺達は卒業した。
当時の俺は東京の大学に進学することが決まり、正直ホッとしていた。
れっきとした理由でリョータとナルミと距離をおくことが出来るからだ。
地元にいたら、何かの偶然で会うこともあるだろうし各々の噂も自然と耳に入ってくるだろう。
一度、もつれた糸をそのままにしておきたかった。
俺達はお互い幼くて子供だったから‥‥‥‥。
少しの間離れて暮らせば、また以前のように三人で笑いあえる日が来るはずだ。
そんな淡い期待を抱きながら、俺は二人に旅立つ日を告げずに東京へと出発したのだった。
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