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大学生活は驚く程穏やかに過ぎていった。
新しい友達、それに彼女も出来た。
ただ何をしていても、いつも心のどこかに引っ掛かるものがあった。
大学二年生の春。
俺の携帯電話に予期せぬ人物から着信が入った。
着信主はリョータからだった。
電話の向こうで、リョータは泣いていた。
内容は、ナルミのことについてだった。
急性の白血病で入院したとのことだった。
俺はリョータに治るのかと聞いた。
リョータは泣きながら余命一ヶ月だと答えた。
俺は悪い冗談だろと舌をもつれさせながらそう言うのがやっとで。
でも、リョータがそんな冗談を言う人間ではないことを知っていたから。
俺にはその後に続く言葉が見つからなかった。
ナルミの詳しい病状を告げた後、リョータは早く高知に帰ってこいと言って電話を切った。
これは嘘なんじゃないのか?
悪い夢なんじゃないのか?
暫く自問自答して悩んだ。
後一ヶ月でナルミがこの世からいなくなるなんて、考えたくもなかった。
その日の晩。
母親が俺にナルミの病気のことを告げてきて、やはりこれは事実なのだと絶望した。
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