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「────!?」
声は出なかった
ただ、周囲の人々が息を飲み────。
「な、なんで───。」
その結果に驚愕した
誰よりも、結果を求めた本人が
「何故…命令に従っていない!!」
一切の傷もなく
立ち尽くすアルに声をあらげた
あり得なかった、筈なのに
剣を振り降ろすポーズで、そこにいた
「………危なかったー!! 半分運だったのに、ヤバいな…俺」
「何をした…!!俺の能力は確実にお前に…!!」
「届いた、お前の能力は」
だが、惜しかった
そう言い、アルは続ける
「でも、俺の剣で斬った」
「斬る、だと…!?何を…」
淡々と言い放つ
当然の様に
「特別製の邪剣でな、普通物も斬れるが変わった物も斬れるんだ」
「俺の能力か…!!」
「そう、正確にはお前の能力があるという『現実』を斬った」
現実改変
それを司る、邪剣
その名を、【原罪具現】
「さて、学園には能力測定公式戦ってのがあるらしいが…」
ストンと、軽く振るった剣は足を縛る枷という現実を解く
「ここで成績だすか? 【視界支配】、壱乃宮零士。」
「俺の事を知っているとは…有名人になりすぎたな、アルとか言ったな…次は負けん、覚えていろ」
最後まで、九条を見下して
壱乃宮零士───、眼鏡の少年はその場から立ち去った
「大丈夫か?頭の怪我」
「いえ、それよりも彼女の方を…」
「わ、私は大丈夫です!」
今後の学園生活を助けてもらっただけでなく、怪我の介抱もしてもらった
話によれば、治療に詳しい人と乗船しているらしい
船の中、筆記体で書かれた名札を貼られたドアの前
アルがトントンとノックする
「あれ?留守か?」
だが、反応はない
アルが首を傾げつつ言いながら、少女は確かめるように小さく呟いた
「シエラ…クラウ…なんだろう…?」
「シエラ・クラウディウス、ローマ皇帝みたいでかっこいいでしょ」
柔らかく暖かい、優しい声がった
振り向いた先にいる一人の少女
輝く金色の髪の毛を一つに束ね
碧眼に眼鏡でこちらを見ている
着ている白衣が研究者を思わせる
「初めまして、能力者さん」
ペコリと頭を下げて、そう言った
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