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「九条時雨、です」
「天音詩織と申します」
「よろしく、シグレくんにシオリちゃん」
九条は頭の軽い打撲
セーラー服の少女───天音は爆発の余波による軽い火傷だった
シエラとなのった少女に適切な治療を施され、彼女のベッドに腰掛けさせてもらっている
「ねぇ、アル。外出たでしょ」
「………日焼け止めは塗った」
「……ばか」
ため息をつきつつ、水を絞ったタオルを用意する
その冷たいタオルをアルの顔に撫でるように拭きながら言う
「もう、自分だけの命じゃないのに…」
「わかった!わかったから自分でやる!!人前だぞ!」
「あー、あの、シエラさん?」
天音は小さく手を挙げ、なんとなく、言いにくそうに切り出した
「えっと、二人はお知り合いですよね?じゃあ、その……」
一呼吸、置いて
「アルさんが…吸血鬼というのは…」
そう、一番の謎だ
彼の剣やその素性、聞くべき事は多くある
その問いに、シエラは笑顔で答える
「えぇ、本当よ。本物の吸血鬼」
実在する異形
有り得ない、異端
それがこの場に、すぐ近くに───。
「でも、貴方達に教えれるのはここまで、割と秘密なのよ?」
「え…?じゃあ、なんでここに?」
「ひ・み・つ☆ 向こうに着いたら同じ生徒同士、仲良くしてね?」
「はあ…」
よく解らないが、お友達というらしい
九条も天音も、首を傾げつつ彼らとともにいた
「…もう着くな」
「うん、もう港には入ったね」
窓の外には建設中の開発区が見える
この学園島は常に開発が進む成長する人工島である
まるでSFアニメの主人公が乗る宇宙戦艦の装甲の様に真っ白な島だ
この夏には、目が痛くなりそうな───。
「いや、その比喩解りにくいよ…」
むう…
天音さんはアニメを見ないお方らしい
『本船に乗船している諸君、長い船旅ご苦労だった』
アナウンス。
透き通る様な男の声だ
凛々しく、声だけでその荘厳さが感じられる
『私はこの学園島の最高責任者兼学園最高理事長の早乙女吏人(サオトメリヒト)という者だ』
学園島のトップ
この世界の支配者
『ようこそ───私の世界へ』
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