能力者保護観察機構

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用意された船は沈黙に包まれていた 「……暗い」 広い海が一望できる窓際にいる少年はただ、今の感想を呟いた 近所の通報で夏季検挙に引っ掛かり、黒服集団に拉致され今この船にいる 少年の名は九条時雨(クジョウシグレ) 「……能力も、効かないか」 九条は自身の首に付いた首輪に触れて言った 保護観察される能力者に装着される首輪 それは能力者の位置情報等を発信するセンサーである 能力対策技術が開発されているのか、九条の能力【分解】を一切受け付けない 「…別に、変に抑制はされてないんだけどな…」 ふと、窓枠に触れてみた冷たい感覚、脳の血管を血液が廻る ───アツイ ガクン!と窓枠が外れ、ガラスは大海原へ落ちる 触れた物質を理解できる範囲でバラバラにする力 それが九条の能力である 昔、オモチャの飛行機を親の前でバラバラにしたことがあった 最初何かの間違いと思ったらしいが、その後、家電や家具、ジャングルジムまでも分解したらしい その時、親は全てを理解し、それでも何も言わずに抱きしめてくれた 立ち上がり、周りを見渡す 誰もいない廊下 きっと自動操縦なので船員もいない でも、自分と同じ検挙された人間はいるだろう 探してみる価値はあるかもしれない
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